JUNJI TANIGAWA[TSUIKI-WAKI]

PHOTO BY KENSHU SHINTSUBO

アーティスティックディレクター
谷川じゅんじ

アートピースとしての工藝品。こんなアイデアを思いついたのは2年前でした。人の手による優れた唯一技法が日本には数多くあります。“匠”と称されるその価値は工業製品の増加により後継者が不足、産業としてかつての栄華はありません。しかし、クラフトマンシップという言葉は、今やあらゆるブランドのモノづくりにおいてこだわりや美意識を語る上で欠かせない視点になりました。世界に通ずる日本のクラフトマンシップ「匠」。日本の匠の代表的存在のひとつとして燕三条に200年前から伝わる鎚起銅器の玉川堂があります。その玉川堂とともに新しい視点を持つアートピースとしてこの作品は生まれました。それが鎚起和器“月”です。鎚起銅器の技術をベースに鋳物・磨きの技術を折込み、唯一無二の器を創りました。山や川、そして海など世界中で愛される自然は数多くあります。しかしそれらは場所によって全く異なる姿を持ち意識も理解も異なります。しかし月は世界中のどこから見てもみな同じです。国境や文化を超えた大きな存在、宇宙を思うとき月は限りなく近く、優しく寄り添う存在です。満月・半月・三日月など月の満ち欠けをモチーフにデザインされたその“月”はエディション100の限定生産品。日本のクラフトマンシップが生み出したあなただけの“月”を愛でながら、どうぞ一番大切なものを活けてみてください。

谷川じゅんじ

JTQ株式会社代表/スペースコンポーザー
1965年生まれ。2002年、空間クリエイティブカンパニー・JTQを設立。
「空間をメディアにしたメッセージの伝達」をテーマにイベント、エキシビジョン、インスタレーション、商空間開発など目的にあわせたコミュニケーションコンテクストを構築、デザインと機能の二面からクリエイティブ・ディレクションを行う。

主な仕事に、文化庁メディア芸術祭(2005-2008)、JAPAN BRAND EXHIBITION(2007)、パリルーブル宮装飾美術館 Kansei展(2008)、平城遷都1300年祭記念薬師寺ひかり絵巻(2010)、KRUG Bottle Cooler(2011)、GOOD DESIGN EXPO(2007-2011)、GOOD DESIGN EXHIBITION(2012-2013)、MARC JACOBS ICONIC SHOWPIECESEXHIBITION(2013)、UT POP-UP! TYO (2013)、MEDIA AMBITION TOKYO (2013-2014)、IMA CONCEPT STORE(2014)などがある。2013年、Page One Publishing(シンガポール)よりJTQ 10TH ANNIVERSARY ARTIST BOOK「JunjiTanigawa, The Space Composer」を刊行し、D&AD賞に入選。DDA 大賞受賞、優秀賞受賞、奨励賞受賞、他入賞多数。

http://www.jtq.jp/

JUNJI TANIGAWA DESIGN

これまでメゾンや伝統工芸とコラボレーションして谷川が総合プロデュースしたプロダクトシリーズ。第1弾はシャンパンメゾンKRUGと新潟の玉川堂とのコラボレーションによる鎚起銅器のボトルクーラー、第2弾はKRUGと京都の竹又、高岡の能作とのコラボレーションによる竹と鋳物によるバンブーボトルクーラー。何代にも渡り研鑽された技術と現在の美意識のアッサンブラージュで唯一無二の新しい感性のプロダクトを生み出しています。

2011 KRUG bottle cooler

2012 KRUG bamboo bottle cooler

アートワーク

玉川堂

「人」が「一」枚の銅を「叩」くことで「命」が生まれる。 そう想いを語る玉川基行が第7代当主を務める玉川堂の創業は、1816年にまでさかのぼります。江戸時代後期に新潟・燕の地に伝えられた鎚起銅器の技法を受け継ぎ、産業創始に尽力したのが始まり。日常生活で使われる銅器から、徐々に工藝作品へと発展し、日本が初めて参加したウィーン万国博覧会(1873年)や日英博覧会(1910年)などの海外博覧会に出品しているほか、皇室の御慶事に玉川堂の製品が献上されています。現在は、文化庁と新潟県より無形文化財に指定され、国内唯一の鎚起銅器産地としてその発展に尽力しています。

http://www.gyokusendo.com

鎚起の技術

鎚起とは、1枚の銅板を大小様々な金鎚や木槌を使って打ち延ばしたり、打ち縮めたりしながら器を製作する伝統技術です。銅は叩いたり折り曲げたりすると硬くなる性質があり、柔軟性を回復するために熱し冷却しては、叩き縮める工程を繰り返します。銅板を立体的に成型した後、硫化カリウムなどの天然の液に浸し、銅の表面を酸化させ着色します。堅牢かつ美しい風合いが特徴で、全国でも燕三条にだけ見られる文様です。